第16回講演会のご報告!

 2019年3月23日、第16回目となる講演会を開催しました。

 今回も多数の先生方に足を運んでいただきました。ありがとうございました!

 またまた熱く、面白い講演会でしたので、ご紹介させていただきたいと思います。

【一般演題①】

CKD患者に対し薬物相互作用、PK/PDを考慮し抗菌薬選択を提案した症例」という演題で、中ノ丸薬局 中村宏洋先生よりご発表いただきました。

 

保険薬局では、抗菌剤を腎機能の評価だけで減量を行うことは予後不良にしてしまうというデータも出てきております。そんな中、中ノ丸薬局では腎機能だけではなく、抗菌スペクトルや対象となる菌、耐性菌情報、患者の年齢や背景を考慮し、ガイドラインを参考に抗菌薬を選択することで、医師へ適切な情報提供するという取り組みをご報告いただきました。

【一般演題②】

 いつも鹿児島腎薬でお世話になっています。出水総合医療センターの平松です。今回はありがたいことに一般演題で発表する機会をいただきました。

 当院における薬物投与設計時の腎機能評価についてという演題で、当院入院患者さんのCockcroft-Gault式による推算CCrと個別eGFRの乖離を調査しました。

 

 当院では推算CCrで薬剤投与時の腎機能評価を行っていますが、個別eGFRのほうが正確性が高いとされており、2つの評価方法にどれくらいの差が生じていて、それにより薬剤投与設計にどのような影響が考えられるか調べてみよう!視覚化できれば説得力のあるデータになるのでは!?というのが今回の調査のスタートです。

 

 以前から言われている「推算CCrは肥満患者さんで過大評価される」点を今回データとして目の当りにすることができました。電子カルテの検査結果画面だけでは患者さんの肥満度を見ることはできませんので、個別eGFRでの評価にすることで多少なりとも安全な薬物療法に貢献できるのではと思いました。

腎機能なり薬剤の投与量なり、数値化することはとても便利です。ただ、本来は患者さんの状態(肥満患者?フレイル?)や投与されている薬剤(抗生剤の短期間投与?ハイリスク薬?)なども考慮して、腎機能に応じた投与設計はなされるべきだとも思います(ちょっと発表内容とは矛盾して聞こえるかもしれませんが)。推算式の特性を理解して数値を参考にしつつ、患者さんに合った薬物療法を提供できたらなと思います。

 

 長くなりましたが最後に・・・今回不慣れでつたない発表でしたがご清聴いただき、ありがとうございました。口頭発表はとにかく経験!場数を踏むことが大事!と個人的に思っております。腎に関して温めている研究がある先生、ちょっと口頭発表の経験を積んでみたい先生、鹿児島腎と薬剤研究会の一般演題で発表してみませんか?次回は8月開催を予定しております。ご興味あられる方はぜひご連絡ください(kagoshimajinyaku@gmail.comもしくは、本ホームページの「問い合わせ」にて)。

一般演題座長:小牧先生 特別講演座長:田中先生

【特別講演】

 JA愛知厚生連 海南病院 薬剤部 薬剤師薬剤課薬剤第3係長でいらっしゃいます鈴木大介先生をお招きして、「よし、このあたりでCKD患者の薬物療法を少し俯瞰的に見てみよう」と題して、ご講演いただきました。

 様々なエビデンスを通して、本当にこの薬剤、この薬物治療が患者様にとって有用なものなのか?効果はどうか?ということを改めて考えさせられるご講演でした。

 

 患者の腎機能を評価し、それをもとに投与量を決定するだけでは患者の予後を悪くしてしまう可能性があるということ、例えば抗菌薬では腎機能をもとに減量し、「適正(と思われる)量を投与すること」で終わりになっていないか?この場合の真の目的は、「患者を感染から守ること」が目的であり「減量すること」ではありません。抗菌薬を安易に減量することは、感染を抑えることができず予後を不良にするというデータをお示しいただきました。

同様に、ハイリスク薬であるDOACに関しても、腎機能のみを考え低用量に減量してしまうと、出血性の副作用はおさえることができるものの、本来の治療目的である脳梗塞などのイベントを抑えることができない可能性があるということを、データを用いてご説明していただきました。

 どちらの場合も、数値だけで評価し、投与量の決定を重視するのではなく、患者様自身を見て治療の目的を考慮することが大切だと思います。

 

 腎機能を用いて投与量を考慮すると減量することが多くなりがちです。減量することだけではなく、境界にあるような判断に迷う患者の場合、何が大切かを薬剤師として考え、投与量を決定し、その後の患者のフォローをしっかりすることが必要だと感じました。

 また、国内の透析患者では使用できていないが、海外では使用できるDOACがあるという話や普段何気なく使用しているスタチンですが、腎機能が低下してくる患者とそうでない患者では効果の面で違いがあるという話など、添付文書に記載されていないことでも薬剤師として情報を持って業務に取り組んでいるかどうかということで大きな違いが出てくるとおっしゃっていました。

 

 腎機能を評価し、腎機能を用いた医薬品適正使用ということは少しずつ浸透してきていると思います。これからは、その評価をもとに何を目的とするのかを考え、リスクとベネフィットを薬剤師として判断し、投与量を決定していくことが大切だと感じました。

 

~お知らせ~

鹿児島腎薬では、腎機能評価に関するワークショップを行っております。

ご希望がありましたらkagoshimajinyaku@gmail.comもしくは、本ホームページの「問い合わせ」にてご連絡ください。